コロナ禍の中で「印刷・紙媒体」はどうなっていくのか?

コロナ禍における印刷業界への影響

印刷・紙を扱う印刷会社はじめ、紙の出版などにとっては、2021年も大きく未来が明るく右肩上がりに業績が上がるということはなく、ごく一部を除いては引き続き冬の時代という感じであると言っても過言ではありません。
そんな中、先日Yahooニュースでとても興味深い記事を発見しました。そのタイトルは、

印刷は終わった……削ると内容が一変 「スクラッチ年賀状」作った印刷屋の心意気「紙の価値を考えたい」

引用元:yahooニュース

※とてもユーモアとアイデアに溢れた年賀状なので、是非興味のある方はリンク先の記事に年賀状の全文が明記されているので、読んでみてください。※2022年3月現在記事リンク切れ

というものです。
内容は、印刷会社サンコーが2021年の年始向けに制作した年賀状の紹介というものなのですが、その内容に私自身とても惹かれるものがありました。
ざっくり紹介すると、近年のネット化社会の影響だけでなく昨年発生した新型コロナの影響も相まって、ますます厳しい状況にある印刷というものを、自虐的かつユーモアのある内容でデザインされている年賀状がネットを通じて話題になったというものです。
この年賀状の面白いところは、ところどころにスクラッチ印刷が施されており、そこを削ることで自虐的な印刷へのネガティブな発言に対しポジティブなアンサーワードが書かれているという、とても面白く素敵なアイデアが盛り込まれているという点です。

この年賀状制作の裏には、新型コロナウイルスの影響によって様々なイベントの中止、人と人とが接する機会が減ったことがキッカケにあったそうです。
さらに「単に情報を伝えるだけの紙の役割は失われつつあるのでは」という思いから、新らしい紙の価値を感じるような年賀状を制作したというサンコーの有薗社長の言葉があります。
こうした心情を抱えているのは恐らく、印刷会社の方はもちろんグラフィックデザインに携わる人たちの多くが感じていることだと感じます。だからこそ私自身もこの記事に惹かれたんだなと思います。

もともとネットが普及するにつれて印刷業界としては縮小傾向にありましたが、新型コロナウイルスという新らしい脅威が増えたことで、さらに厳しい状況になったということは残念ながら1つ言えることでしょう。
実際、多くのイベント開催の中止や延期、規模の縮小などから、チラシ・ポスターといった印刷媒体の制作機会は間違いなく減りました。人と人が実際に関わる機会も減ったことも要因になっています。
だからこそ、このスクラッチ年賀状のように「紙だからこそ与えられる価値」というものがこの先必要だと痛感します。

テレワーク増加による印刷の影響

印刷や紙媒体のコロナ禍の影響として「テレワークの普及」も1挙げらると思います。
会社に出社しなくても自宅などでインターネットを利用したリモートでの業務では、オンライン会議で相手の顔をみながらのMTGなどは可能ですが、印刷した媒体を相手に直接渡したり見てもらうという機会は当然減ります。
それこそ大半の資料はデジタルで代用可能です。まぁもともと社内資料などに関してはあまり影響の範疇ではないですが、クライアント先が営業をする際に必要な資料ということであればその限りではありません。

逆にプライベートに関して言えば、自宅にいる機会が増えたことで本や雑誌を読むことが多くなった、なんていうこともあるでしょう。
もちろん電子書籍も多く普及していますが、まだまだ実際の紙の本で読書をしたいという方も多いと思います。

印刷・紙だからこその価値を追求

デジタル媒体と違い、実際に手元で触れられるモノとしての紙の良さがあると思います。
見た目以外の質感などは、実際に触れることで得られる貴重な情報の1つです。
雑誌や本などのページをめくる際の感情といったものは、電子書籍ではなかなか味わえないものがあります。

またメールやLINEといったネットを通じた画面越しのメッセージに比べ、紙に書かれた手書きの文章にはどこか温かみを感じます。

単純に「情報」というものだけを得るのであれば、ネットを介したものの方が手軽で便利かつ効率的な場合がほとんどです。
しかし、そこに別の「気持ち・感情」といったものも得たい、あるいは相手に気持ちを伝えたいという場合には、紙を用いた手段の方が効果的な場合があると感じます。
このコロナ禍において、人と接する機会が減ったということもあるかと思います。
そんな時、家族や友人・知人からの便りはもちろん、ちょっとした買い物でもお店から手書きのお礼文が書かれた手紙が同封されていたら、それだけで少しココロがホッコリするのではないでしょうか。

こうした緊急な事態だからこそ、アナログな手法だからこそ生み出せる暖かさといったものが注目されてくのではと思います。

紙だからこそ温かみを感じるモノの例:手紙、年賀状、招待状など。手書きで書かれているモノにはより感情を揺さぶられる。

印刷・用紙には多様性がある

一括りに「紙」といっても、サイズ・厚さに素材などに区別され、その種類はたくさんあります。
そのため用途に応じた用紙や印刷方法が選べ、他との差別化であったり、希少性やユーモア溢れるアイデアといったものが実現できます。
この記事内で紹介しているサンコーが制作した年賀状がまさにそれにあたりますね。

WebサイトでもJavascriptなどを用いて動的でアイデアを凝らしたページなどももちろん存在しますが、上記で挙げた「実際に触れられる紙だからこそ得られる情報」というものも加味することで、印刷と紙だからこそ生み出せる価値というものは存在すると思います。

これからの印刷・紙媒体

冒頭でこのコロナ禍で、印刷・紙媒体を扱う業界全体としては冬の時代、なんていう書き出しをしましたが、実際のところはここも温度差が生じていると感じます。
良いところは良く、悪いところは悪い。当たり前なことではありますが、以前では絶対数的に会社の規模の大小でそれは起こっていたことだったと思います。

しかし、この新型コロナウイルスという未曾有な脅威に対しては、もはや企業の大小だけでは測れない突発的な危機であったり、逆にチャンスが訪れるということになっています。
そうしたことを踏まえがら、今後の人の生活様式であったり、人との関わり方、気持ちの変化などをなるべく注意深く感じられるようにすること。
ここに1つ印刷と紙媒体が今後の新しい価値というものを生み出せるか否かではないでしょうか。

それをうまく見つけられれば、このネット社会であっても普遍的に、需要のある価値ある製品・サービスを提供できるのではと感じます。

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