フリーランスグラフィックデザイナーのデザイン料の決め方について

はじめに

未経験からフリーランスになった方、あるいはデザイン事務所在籍後にフリーランスになった方など。フリーになる経緯は人それぞれあると思います。会社形態なのか個人事業主となるのかなども人によって異なりますが、
ここでは主に、個人事業主形態でフリラーンスのグラフィックデザイナーになりたい方に向けた内容になっています。

デザイン料の相場はあってないようなもの

デザイン料を決める際に、まず参考にするのは他のデザイン事務所のHPなどインターネットを駆使したリサーチがやはり手っ取り早いのかなと思います。
ただ実際に調べてみると価格はどこも一様でまったく同じということはまず無く、デザイン料の提示自体していないデザイン事務所などもあったりするなんていうこともあります。
ネットで「○○ デザイン料 相場」などとキーワード検索すると、デザイン事務所毎のデザイン料の比較などがされていたりもしますが、価格にはかなりバラつきがありさらに迷ってしまうかもしれません。

理由はデザイン事務所や各デザイナーによっても考え方が変わる部分が多く、実際のデザインへの取り組み方や取引対象にしている規模の差異があるからです。
有名で実績のあるのデザイン事務所などはわざわざデザイン料の公表などはせずサイトでは経歴や作品、理念などを魅力的に紹介するに留まることが多い傾向だったり、デザイナーによってはあえてデザイン料を提示しないことで、自身の価値を高めるといったブランディングに沿った姿勢をとっている場合もあります。

また昨今はクラウドソーシングなどのサービスを用いて、依頼者側はもちろんデザイン提案する側もプロ・アマ問わず誰でもできるような環境が増えています。
そういった背景から、よりデザイン料の相場や価格に対する意識の変動は大きいものになっています。

もちろんある程度常識の範囲内というものはありますが、以前に比べフリーランスの人口が増えたりクラウドソーシングなどのサービス提供もはじまったこともあり、デザイン料の相場というものはそこまで強い意味を無さなくなったのかなと感じます。

デザイン料は「制作時間×時間給」で算出する

フリーランスになりたてほやほやの方はまず、自分のスキル・経験といったものを冷静かつ客観的に判断することが大切です。
その上で一番シンプルなデザイン料の算出方法としては、「制作時間×時間給」にしてしまうことです。

他にも制作に必要な画像やイラストなどの素材が必要だったり、制作上どうしてもリサーチする必要がある際にかかった経費などがあれば、そちらも別途追加で計上すると良いでしょう。

制作時間は、各デザインプロジェクトに費す総時間を指します。
ここで1つ誤解がないようにお伝えしますが、制作時間には最初の打ち合わせから、最終的なの納品までを終えるまでにかかった時間という解釈です。
実際のデザインデータを作成する制作だけの時間では無いことも念頭においておくと良いです。

次に時間給ですが、ここには自身の人件費をはじめ、個々のデザインスキル、経験年数や実績などを考慮したものなどを含んでいきます。
具体的な金額の設定は各々の力量と判断によりますが、仮にデザイン初心者でフリーランスになったばかりという方であれば、まずは全国的な最低賃金よりも低くならないような価格からのスタートをし、その後ある程度の実績を積むことでより高い金額設定にしたりということも1つ方法としてあります。

あくまで仮にですが、A4両面チラシのデザインをする際、自身の時給を2,000円と設定し、打ち合わせからデータ納品までに要する時間の見積もりが10時間とした場合、デザイン料は20,000円といった具合に算出できます。

とはいえ経験が浅い方ほど制作時間は増えてしまったり、その都度制作内容も変わるので一律の制作時間が決められないといった場合がほとんどだと思います。
そのためこの「制作時間」には実際にかかった時間ではなく、「目標」として上限となる時間スケジュールを設けることが必要です。
先ほどの例で言えばA4両面チラシデザインでは制作時間をMAX10時間と設定することで、実際の制作時間が10時間未満や以上であったとしても一律のデザイン料「20,000円」を請求するという具合です。

この場合は特にデザイン初心者は上限となる製作時間を超えてしまうケースも多く、最終的に利益率としてはあまりよく無いということになるかとは思いますが、経験を積んでより効率的な仕事の進め方ができるようになります。
また、経験と実績を重ねていくことで確実にデザイン料=売上というものは上がってきますし、実際上げなくてはならない機会といものは必ず訪れます。

ただし、自身の実力・スキルに見合わないデザイン料を設定したり、他の同業者の利益を損なうような安価すぎる価格の設定はやめましょう。
デザイン料も自身で決められるのがフリーランスの良いところでもありますが、実力に見合わないデザイン料を提示してもその価値を認めてもらえなければ誰からも依頼はきません。
また、依頼をたくさん受けたいからと極端に安いデザイン料で仕事を引き請けることは、結果としてそのデザイン業界全体の価値を損なうことにもつながりますので、こちらも同じく注意したいところです。

とはいえ、この時給換算という考え方自体はデザインという1つの価値を提供する職種からしてほんとうはあまり良くないものかなと個人的には思っています。
なのでこの方法はあくまで、フリーランスとして経験がほとんどない方や、右も左も分からないといった方がデザイン料を設定する上での1つのケースになればというもので記述させていただきました。

営業するターゲットにも影響する

デザイン料の設定には自身ががどのような相手をターゲット層にするのかにもよって変わってくる場合もあります。
極端な例で言えば有名な大手大企業が取引相手の場合と、中小規模や個人が相手の場合ではプロジェクトの規模も違いますし、投じられるデザインへの予算というものも異なります。
まずは自身がどのような相手をターゲットに仕事を展開していくのか、というのも1つ考慮すべき点と言えます。

JAGDA(公益社団法人 日本グラフィックデザイナー教会)では、各媒体におけるデザイン制作料の算出方法を紹介しているので、こちらも参考にしてみると良いかも知れません。
JAGDA:デザイン料金表

※ただし作られたが大分昔のため、あくまで参考程度にみておくのが良いです。

最初は「制作時間×時間給」で分かりやすく設定。ただし制作時間ばかりに気を取られないことが重要

最後に

デザイン料は一度決めたら変えられないということはありませんが、頻繁に変えてしまうのはあまり良くありません。
自身の転機となる明確なターニングポイントなどを経た際や二次的な要因でどうしても必要な際には見直し、後は基本的にはデザイン料を変えずに行くことが良いかと思います。

また、今回ご紹介したのはあくまで1つの考え方の例でありこれが絶対のものではありません。
実際、制作時間の大小によってその良し悪しが決まるとも言い切れないのがデザインというものです。
実際こんな方法では採算とれないよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この記事があくまでフリーランスになりたての方で、どのようにデザイン料を決めてよいか分からない、といった方に向けた参考としての内容になります。

個人的にはデザイン料というもの自体、個人や企業の方含め多くの方に対して不明瞭な部分が多いため、こうした具体的な方法でデザイン料を決めておくと分かりやすいかなと思っています。
特に対個人のBtoCや、普段デザインを依頼したことのないという方に対しては、こうしたデザイン料の不明瞭さが依頼する上でのハードルとなる場合が多いと耳にします。

逆に、ある程度名の知れた企業などであれば、クライアントにデザイン料を決めてもらうということや、別の交渉術であったりも可能でしょう。
私の場合は個人事業主の方や中小規模で事業展開されている方の依頼が多いため、できるだけ分かりやすくデザイン料に関してのご説明などしている、という感じですね。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。


TOP
TOP