「らしさ」とは主観的かつ客観的な価値観
「らしさ」の意味に関しては、
(接尾語「らしい」の語幹に、さらに接尾語「さ」の付いたもの) 名詞や形容動詞語幹などに付き、そのものにふさわしい様子をしていること、まさにそのものであると判断される程度、などの意の名詞をつくる。「男らしさ」「学生らしさ」「確からしさ」など。
コトバンク
このように、そのものにふさわしい様子・様相であることを一般的に「らしさ」として定義しています。
そして付け加えるならば「らしさ」とは主観的かつ客観的な価値観の上に成り立つものであると言えるでしょう。
例えば自身で思う「自分らしさ」と、他人から見て感じる「あなたらしさ」は必ずしも同じとは限らないはずです。
「自分らしさ」とは自分自身で考え、こうありたいという理想像であり主観的に基づくもの。
対して他人からみた「あなたらしさ」は第三者目線という客観的なものになります。そのため、それぞれが感じる「らしさ」に齟齬が生じてくるのは必然だと言えます。
自分が思う「らしさ」が全ての人にも同様に感じてもらえれることができればベストですが、実際にはそれは難しく、特に多様性を重んじる現代社会では尚更困難であると思います。
とはいえ個人が考える「らしさ」というものは、自らの人生をより豊かにするために必要なものなので、客観的な価値観に左右される必要はまったくないと言えます。
事業における「らしさ」
個人の「らしさ」とは異なり、これを事業に置き換えた場合はどうでしょうか。
まず第一に事業の場合は、自分たちだけが理想として描く「らしさ」を追求すれば良いというわけにはいきません。
企業、会社、お店、商品・サービスなど、事業形態は様々あれど、いずれも必ず「顧客」という第三者となる存在があるからです。
個人の「らしさ」は己の価値観でのみで完結すれば良いのに対し、事業の「らしさ」にはその顧客に対してどのような価値を感じてもらえるかどうかがとても重要になってきます。
例えば、人気コーヒーショップである「スターバックス」では、魅力的な商品ラインナップだけではなく、実際に店舗に訪れることで感じられる特有の空間や雰囲気といったものを価値として提供することで、いまだに多くのお客さまを魅了しています。
デザインで伝えていく「らしさ」
「らしさ」を伝えていくために行う取り組みとしてはやはり「ブランディング」が最適解でしょう。
そしてそのブランディングには「デザイン」という要素は必要不可欠なものになります。
ただし単なるCI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)などのように、主観的な表面上の
デザイン制作で「らしさ」を伝えていく場合に重要なのは、「単に見た目だけを制作するのではない」という点をしっかりと認識し、その上で最も適したカタチにして届けていくことです。
ブランディングを担当するデザイナーはクライアントとその事業で伝えていきたい「らしさ」 をまずはしっかりと明確化と共有をして、それをどのようなカタチで届けていくのがベストなのかどうかという点を探っていきます。
世間に迎合した見た目やビジュアルなどで無難に仕上げるというのは、実のところそこまで難しくはありません。
そかし、そこにしっかりと伝えていきたい「らしさ」がきちんととカタチとして伝わるものになっているかどうかという点と、デザインに制作意図の有無があるかどうか。
この制作の背景における深さの度合い部分が、素人や少しデザインを齧った方との大きな違いであり、プロのデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
最後に
昨今の多様性を重んじる社会からすれば、特定のものに対して固定概念のような押し付けになる「らしさ」はあまり歓迎されるところではないのかもしれませんが、個人が自分の人生を豊かにする場合や、事業の魅力などを伝えていくブランディングやデザインなどの観点から言えばこの「らしさ」というものはとても大切なものになってくると思います。
コメント